山本健吉
山本健吉 名言・語録5件
(文芸評論家)
「船場は秀吉時代からの大阪の中心部で、秀吉が大阪に築城したとき、町の繁栄のために堺の商人を移住せしめた、もっとも古い一角である」
「額縁のように堀川で囲まれた四角な地帯で、大阪の商業、金融の中心地帯であり、最近まで古風な生活の定式を崩さず、すべてにわたって船場風を保ち、特殊な船場言葉を使った。山崎豊子氏は『船場狂い』の中で書いている」
「『船場狂い』のヒロイン久女は、船場と川一つ隔てた堂島で生れ、その生涯の念願は、船場へ移り住んで、御寮人(ごりょうにん)さんと呼ばれ御家(おえ)はんと呼ばれることであった」
「谷崎潤一郎氏の小説や随筆にも、船場に対する憧れが述べられている。氏の東京の商業、金融の中心であり、生活の定式を保っていた日本橋に生れ、それが急激に破壊されて行くのを眼の前にして、東京嫌いとなり、今なおそれを残している船場の生活を見て、強い憧れとなったのである」
「氏は一時、船場の路地のひそやかな奥に隠栖(いんせい)したいと思ったこともある。『春琴抄(しゅんきんしょう)』『蘆刈(あしかり)』などの名作は、氏の船場への憧憬を物語っている。『細雪』は一面から言えば、船場の旧家の没落史でもあった」
※出典『山崎豊子の「しぶちん」の解説』
【感想・論評・補足】
戦前の船場のことを知りたいと思い船場の商家出身の作家、山崎豊子の小説『しぶちん』を読んでみた。解説を山本健吉が書いているが、彼の解説で船場のことを知りたければ谷崎潤一郎の小説を読めばいいとことも分かり嬉しくなった
経歴(プロフィール)
■山本健吉(やまもと・けんきち)
【1907年~1988年】日本の文芸評論家。日本の古典詩歌に詳しく、古典作品と現代文学との関係の究明に力を注いだ。本名は石橋貞吉(ていきち)。文芸評論家石橋忍月の三男。1907年4月26日、長崎市で生まれる。慶應義塾大学国文科卒業