高嶋菊次郎
高嶋菊次郎 名言・語録1件
(王子製紙社長)
「当面、傍系会社の発展に主力を注ぐべきであり、工場を南方に新設したり、国内の設備を移設するようなことは避けるべきである。現在の生産を維持して、製品のみを現地に送るようにすればよい」
注釈:1942年、南方の占領地区に用紙を供給してほしいと、軍から王子製紙に要請がきたが、高嶋社長は南方進出を拒んだ
【出典】
『王子製紙社史(本編)』
【感想・論評・補足】
1942年、南方の占領地区に用紙を供給してほしいと、軍から王子製紙に要請がきた。この地区は元々着目していた地区であったが、中国・満州地区に方向転換したため実現していなかった。相談役の藤原銀次郎は『国家的見地に立ち、積極的に王子の紙に関する知識、経営を国家のために役立てるべき』と軍に協力し南方に進出すべきと強く主張。それに対して高嶋社長は『製品のみを現地に送るようにすればよい』と反論。ここで興味深いのは、軍からの要請を、全面的に協力するべきか、最低限の協力でいいかを議論しているところである。当時、軍からの要請で軍に協力した企業は多いが、これを軍の命令で従う以外に選択肢はなかったとして片付けている企業が多い。王子製紙の社史には誰がどう発言し、誰が意志決定したかがはっきり書かれている。軍の強制性がなかったことも分かるし、経営判断の責任所在も分かるので素晴らしい社史といえる
経歴(プロフィール)
■高嶋菊次郎(たかしま・きくじろう)
【1875年~1969年】明治、大正、昭和期の実業家。王子製紙社長を歴任。1875年5月17日、福岡県で生まれる。東京高等商業学校を卒業。大阪商船に入社。後に三井物産に転じ、藤原銀次郎の知遇を得て、1912年に王子製紙に入社。1938年、藤原の後任として社長に就任。常に藤原を助け、多くの足跡を残した