名言・語録・格言

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得能正照

得能正照 名言・語録1件
レンゴー専務・異才の技術者)
 
 

「急いで歩けと言ったのは相手にこのラインに興味があると思わせたくなかったからだ。こちらの手の内を見せてはならない」
 
 
【注釈】
海外の有力企業の工場視察をした際、得能に同行した大坪清(後にレンゴー社長)はラインに差し掛かると得能に『急いで歩け』と囁かれる。速足で工場を一周した後、得能はホテルに戻り、ラインの完璧な見取り図を描き上げる。この見取り図を見せながら大坪に言ったのが上の言葉。大坪は数秒横を通り抜けただけで何故完璧な見取り図を描けるのか驚く。その理由は海軍では瞥見視力(べっけんしりょく)といって一瞥(いちべつ)で見たもの全てを脳裏に焼き付ける能力を求められる。潜水艦で潜望鏡を悠長に使うと敵に発見されるため、覗いた一瞬で敵船の形や進行方向、速力を見極めなければならない。海軍兵学で訓練を受け得能はこういった能力を身につけていた。戦後の焼け野原から高度経済成長を果たせたのは、各界に戦争へ行って帰ってきた得能のような猛者(復員軍人)が大勢いたからであろう
 
 

【出典】
私の履歴書日経新聞2020年3月)』
 
 

【感想・論評・補足】
得能は抄紙機の紙切れを劇的に減らした改良型円網抄紙機(ウルトラフォーマ)をはじめ、従来の常識を覆す開発を次々に手がけ、国内のみならず海外にも注目され『タイガー・トクノウ』というニックネームで世界の紙・パルプ業界で広く知られた
 
 

経歴(プロフィール)
■得能正照(とくのう・まさてる)
【1923年~2015年】日本の技術者。レンゴー株式会社専務を歴任。1923年に広島県の三原で生まれる。1941年12月、江田島海軍兵学校(73期生)に入学。卒業後、駆遂艦、次に潜水艦に乗艦。九死に一生を得て、終戦佐世保で迎える。母親が大昭和製紙の創業者である斉藤知一郎の妹だった縁で、大昭和製紙系の朝日製紙へ入社。大昭和製紙本体に移籍の後、レンゴーへ。老衰のため死去、91歳で死去