「合理化というのは、景気のよいとき、あるいはもうかっておるときにやるべきであって、貧乏してからやる合理化というのは、もう首切り以外に手がなくなってくる」
「『貧すれば鈍ずる』といって、貧乏するといい知恵は出てこん。貧乏するとばかなことしか考えられん。だから景気のいいときにいい知恵が出てくるんだと思う」
「かんばん方式は、高度成長時代でも必要だが、もともとは低成長時代のために考えられたものである。必要なものを、必要な時につくることに徹しなければならず、つくりすぎはムダの中でも最も大きなムダである」
「砂上の楼閣(ろうかく)も、基礎のしっかりした建物でも、見た目は同じだが、台風が来てみて初めてその強さがわかる」
「現在、産業界がトヨタの生産システムに注目しているのは、それが台風=不況に強い体質だからだ。これは一朝一夕(いっちょういっせき)にできたものでなく、諸先輩が永年苦労して築き上げたものであり、今後も大切な基礎づくりに、いっそう努力しなければならない」
「『自動化』と『ジャスト・イン・タイム』は、製造部門だけに限らず、管理・間接部門でも必要だ。管理・間接部門では、真に必要な仕事かどうかを見分けることが難しい。したがって、管理・監督者自身が、本当に必要な仕事をしているかどうかを見分ける力をつけなければいけない」
「何かをしておれば、仕事をしていると思いがちである。つねに『もしやらなければ経営にどういう影響を与えるか』を考え、本当に必要な仕事を見分けてほしい。ジャスト・イン・タイムに仕事をしているかも同時に見直してほしい。このような角度から仕事の内容ややり方を変えていくことが管理・監督者の仕事であり、それが部下を大切にすることにも通じる」
【出典一覧】
『大野耐一の現場経営』
『常に時流に先んずべし トヨタ経営語録』PHP研究所(編)
【感想・論評・補足】
世界的に有名となった『トヨタ生産方式』を体系化したのが大野耐一である。不況になってから合理化をしても手遅れ。景気のいい時に不況に備えて準備をするのが合理化であると大野はいう。まさに治に居て乱を忘れず(ちにいてらんをわすれず)である。
経歴(プロフィール)
■大野耐一(おおの・たいいち)
【1912年~1990年】日本の技術者、経営者。トヨタ自動車工業の副社長を歴任。かんばん方式など生産管理のあり方として世界的に有名となった『トヨタ生産方式』を体系化した人物として知られる