牧野伸顕
牧野伸顕 名言・語録1件
(政治家、在イタリア公使)
「お前はなんという大馬鹿ものだ。我以外みな師なりという言葉を、お前は忘れたのか。今、日本とアメリカは大事な関係にある。そのアメリカの大使館に日本の政府が、いろいろな指示を打電する。お前はそれを受け取り、大使よりも先にその電文を読むことができる立場にある。その廊下の間の何秒間で電文を見て、私ならどうするということをなぜ、考えないのか。そして、後で大使の行動を見て、自分の思ったことと違ったら、それがなぜかと考えてみる。そうやって勉強すればいいじゃないか。思ったとおりだったら、自分は大使並みだと喜べばいいじゃないか。こういう勉強ができる恵まれた立場にいるにもかかわらず、それを絶望したとは何事であるか」
【注釈】
外交官となった義理の息子の吉田茂(後の首相)に書いた手紙。吉田は外交官になり、牧野伸顕の長女雪子と結婚する。ロンドン赴任後に今度はアメリカの首都ワシントンに赴任。希望に燃えていたが、そこでの仕事は東京からくる電信を電信室のドアのところで待って、それをすぐに受け取り廊下を通って大使に渡すという単調な仕事であった。吉田はそのことに不満を持ち、義理の父親である牧野伸顕に『私のような有能な人間を、こんな使い方しかしない。これでは日本の大きな損失だ。絶望した。もう外交官を辞める。ぜひお許しを願いたい』と手紙に書いて送った。それに対する返事がこれである。これには吉田もハッとさせられたという
【出典】
著者:下村澄/清水榮一
【感想・論評・補足】
もし、牧野伸顕のこの手紙がなければ吉田は外交官を辞めていたかもしれないし、後に首相になることもなかったかもしれない。牧野の言うように『我以外みな師』。どんなにつまらないと思う仕事でも必ず学ぶことがあるはずである
経歴(プロフィール)
■牧野伸顕(まきの・のぶあき)