井上久男
井上久男の名言・語録7件
(経済ジャーナリスト)
「もの造りのプロセスはコンピューターの導入によって大きく変わった。自動車メーカーでも紙の図面からCAD(コンピューター支援設計)に変わるなど、かなり前からコンピューターが開発の主役になっている」
「状況に変化が生じたのは2000年代に入ってからのことだ。工業製品としての車の性格が変わり、安全性や燃費効率向上のために電子制御の技術が不可欠となった。いわば鉄の塊だったクルマがソフトウェアの塊になったということだ」
「多くのソフトウェアを確認するために試作車を使っていたら膨大な時間がかかる。開発が長引けば当然、コストは上昇する。そこで各種条件のもとでシュミレーションして、試作することなく仕様を完成させるノウハウが求められるようになった」
「こうした要求は今後も着実に強まっていく。完全自動運転車を現物で試作しながら開発していたら、『完成までに10の6乗年(100万年)かかる』という試算もあるほどだ」
「『バーチャル・エンジニアリング』に乗りおくれた企業がどうなるのか。関係者は想像さえしたくないはずだ」
「バーチャル・エンジニアリングの進化によって、『机上の論理』でクルマが開発できるようになった。この大きなパラダイムシフトから目を背けていては、日本の自動車産業は、かつての『日本軍の兵器』のようになってしまうのではないだろうか」
「『バーチャル・エンジニアリング』は『モデルベース開発(MBD)』とも呼ばれている。簡単にいえばバーチャル・シュミレーションを使って、試作品を作らずに製品の仕様を決めてしまう手法のことだ。この分野では日本の自動車メーカーでマツダが最も進んでおり、逆にトヨタは出遅れていると言われている」
【出典】
『自動車会社が消える日』
【感想・論評・補足】
モノづくり産業が大きく変わる。特にクルマ産業の変化は大きい。考えを180度変えなければならない。『現場現物主義』などと言っていたら、世界から日本の産業は取り残されてしまうだろう。井上の著書を読むとそのことが良く分る。
経歴(プロフィール)
■井上久男(いのうえ・ひさお)
日本の経済ジャーナリスト。経営論を専門。政策アドバイザー。1964年生まれ。福岡県出身。九州大学文学部哲学科卒業。NECを経て、朝日新聞社中途入社。経済部で自動車や電機産業等を担当。その後、独立