アマルティア・セン
「私が通っていたのは、日本に強い興味を持っていたラビンドラナート・タゴール(1861~1941)が設立した学校です」
「そこで私が主に学んだのは日本史です。特に印象に残っているのが仏教伝来の歴史です。仏教は中国ではなく朝鮮半島を経由して日本に伝来したこと、その後、日本に様々な影響を与えたことなどを知りました」
「仏教が日本の立憲的な考え方に影響を与えたことも学びました。聖徳太子の『17条憲法』の中に、『ものごとはひとりで判断してはいけない。かならずみんなで議論して判断しなさい』(第17条)という条項があったのを今でもよく覚えています」
「『17条憲法』が制定されたのは、イギリスで『マグナカルタ』が制定される600年以上も前のことです。聖徳太子は推古天皇の摂政として国を治めていましたが、彼はこのときすでに『政府の決定は、皆で議論をした結果でなくてはならない』ということの重要性を認識していたのです」
「仏教が日本の印刷技術の発展に貢献したことも授業で学びました。世界の中でも日本、朝鮮半島、中国で特に印刷技術が進んだのは、『仏教の教えを広めたい』と強く思った技術者たちがいたからです。私はインドの印刷の歴史にも興味があったのですが、インドでは印刷技術は進みませんでした。なぜなら、仏教はインド発祥でありながら、他の宗教の台頭で、徐々に勢力を失っていったからです」
「1860年代、日本の識字率はヨーロッパの国々よりも高く、1913年ごろには、世界有数の出版大国となっていました。当時、日本で出版される書物の数は、イギリスを追い抜き、アメリカの2倍以上にも達していました」
「私は安倍首相には直接お会いしたことはありませんが、日本銀行総裁の黒田東彦氏、内閣官房参与の浜田宏一氏のことはよく存じ上げています。彼らは世界の中でもトップレベルのエコノミストであると思います」
【出典】
『ハーバード日本史教室』佐藤智恵(著)
【感想・論評・補足】
アマルティア・セン教授は日本人より日本のことに詳しいかもしれない。とても勉強になる。