名言・語録・格言

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斎藤幸平

斎藤幸平の名言・語録9
経済思想史研究者)

 


「資本主義の歴史を振り返れば、国家や大企業が十分な規模の気候変動対策を打ち出す見込みは薄い。解決策の代わりに資本主義が提供してきたのは、収奪と負荷の外部化・転嫁ばかりなのだ。矛盾をどこか遠いところへと転嫁し、問題解決の先送りを繰り返してきたのである」

 


化石燃料の大量消費が気候変動を引き起しているのは間違いない。とはいえ、その影響のすべてが即時に現れるわけではない。ここには、しばしば年十年にも及ぶ、タイムラグが存在するのだ。そして資本はこのタイムラグを利用して、すでに投下した採掘機やパイプラインからできるだけ多くの収益を上げようとするのである」

 


「こうして、資本主義は現在の株主や経営者の意見を反映させるが、今はまだ存在しない将来の世代の声を無視することで、負担を未来へと転嫁し、外部性を作り出す。将来を犠牲にすることで、現在の世代は繁栄できる」

 


「だが、その代償として、将来世代は自らが排出していない二酸化炭素の影響に苦しむことになる。こうした資本家の態度をマルクスは、『大洪水よ、我が亡き後に来たれ!』と皮肉ったのだ」

 


「負荷が不可視化されていることに甘えて、うすうす気づいていながら、現実から目を背けていた先進国の私たちのせいで、対策を打つのが遅れてしまったのだ」

 


「問題はもっと根深いのだ。要するに、これまでの経済成長を支えてきた大量生産・大量消費そのものを抜本的に見直さなくてはならない。だからこそ、2019年には、一万人を超える科学者たちが、『気候変動は、裕福な生活様式の過剰消費と密接に結びついている』ことを訴え、既存の経済メカニズムから抜本的に転換する必要性を唱えたのだ」

 


「現在、ガソリン自動車が世界中で膨大な量の二酸化炭素を排出しているのは間違いない。だからこそ、低炭素車両を導入する緊急性は高いし、国はそのための積極的支援を行うべきである」

 


「一部で期待されている『循環型経済』が持続可能な社会を実現するかのような言説も、ミスリーディングである。循環させようとするだけでは不十分で、資源消費量そのものを抜本的に減らさなくてはならない」

 


「気候危機の時代には、政策の転換よりもさらにもう一歩進んで、社会システムの転換を志す必要がある。資本主義から抜け出し、脱成長を実現することで得られる『ラディカルな潤沢さ』こそ、晩期マルクスからの真の対策なのである」

 

 

【出典】
『人新世の「資本論」』

 


【感想・論評・補足】
温暖化対策はSDGsエスディージーズ)では間に合わない。資本主義から抜け出し、今すぐに成長をすることをやめなければ、地球は守れない。斎藤氏の著書『人新世の「資本論」』を読むとよく分かる。世界の指導者、識者、経営者は斎藤氏の本を読むべきである。

 


経歴(プロフィール)
■斎藤幸平(さいとう・こうへい)
日本の哲学者、経済思想史研究者。専攻はヘーゲル哲学、ドイツ観念論マルクス主義哲学、マルクス経済学。1987年生まれ